エクタクロームE100 作例

コダックのポジフィルム「エクタクロームE100」の特徴を作例で比較紹介

2018年復活したコダックのカラーポジ(リバーサル)フィルム「Ektachrome E100(エクタクローム)」。

エクタクロームは、エクタクローム64、エクタクローム100。そして2000年代にはE100G、E100V、E100GXなど、数多くの種類が販売されていました。

パッケージ的には新しく販売されたE100シリーズ時代のデザインを踏襲したものですが、新しいエクタクロームはどういう写りをするのか?

過去に撮影していたエクタクローム、フジのプロビアやベルビアなどと比較しながら、その特徴を見て行きたいと思います。

エクタクロームE100の作例

エクタクローム 作例

ContaxT2で撮影。アンダー気味だったので、明るく持ち上げています。

この写真を見て思ったのが、クリアなこと。これまでのコダックとは白の印象が違います。

描写の線は繊細で発色はこってり派手ではなく、鮮やかな傾向です。アンダーな写真ですが、シャドーの潰れもほとんどなく、階調が広いです。

エクタクローム 作例

ContaxT2 F4で撮影。ちょっとキレがないのは、カメラの特性だと思います。

日陰での撮影なこともあり、渋めの色合いです。

Ai-s Micro Nikkor 55mmで撮影。

日差しも強いので、ポジで撮影すると顔が完全に潰れるかと思ったのですが、意外と生き残っています。

オーバー露出になっているバナナの色味は実際より鮮やかで、背景のシャッターは地味に写っています。

Ai-s Micro Nikkor 55mmで撮影。チャイ屋を後ろ側から写しています。

右側から朝日が差し込む複雑な光の条件ですが、全体的に上手くまとまっています。階調が豊かで、クリアな発色です。

エクタクローム E100Gの作例

過去のコダックポジフィルムとの比較として、E100Gの作例です。

コダック リバーサルフィルム

E100Gは自然な発色と今ラストで、やや地味な色合いのフィルム。

階調の豊かさはE100とにていますね。ただハイトーンな部分がクリアというより、白っぽいです。

若干霞んだような色合いです。E100であればもっとクリアな色になっていると思います。

シャドー部はE100と比べると潰れています。バナナなどの色は鮮やかですが、肌のトーンなどはこちらの方がよりナチュラルだと思います。

エクタクローム64の作例

エクタクローム64はエクタクロームのオリジナル。旧式のフィルムと言ってもいいですが、デジタルを経た今では現代的な傾向もあると思います。

ネガに対してポジフィルムはドラマチックな印象がありますが、このフィルムはナチュラルな描写です。

クリア感はないですが、コントラストも控えめで発色も優しいです。

直物の描写が繊細で、発色が豊かです。

フジフィルム PROVIA100F(プロビア)の作例

日本人にとってのポジの定番ですね。デジタルに移行する以前は、出版物に使うフィルムと言えばプロビアでした。

プロビア作例

かなり彩度が強い。フィルム以上に、ContaxTVSを使った撮影というのが大きな要因だと思います。

プロビア作例

インド人のポートレートは、目の堀が深いから難しい。Tシャツの質感と首回りは、リアルで生生しいですね。

やや硬めの写りをするAi-s Micro Nikkor 55mmで撮影していますが、コダックと比べるとフジは硬いですね。

ただこれはちょっとコダックっぽい。E100で撮影していれば、恐らくシャドー部がもう少し残っていると思います。

ベルビア 50の作例

際立つ彩度と超硬調で知られたベルビア。

ベルビア作例

ベルビアらしいド派手な一枚。とはいえ、このシチュエーションならプロビアでも似たような傾向になると思います。

ベルビア 作例

穏やかな日差し1枚。この写真はニコンのズームレンズを使ったので、コントラストが控えめになっています。

控えめながら、色の鮮やかさがベルビアらしいですね。

これはかなりコントラストが強いシチュエーションです。硬調で高コントラストというフジらしい描写。

これもベルビアらしい写真。空を出したかったので、地上はアンダーにしています。

ベルビアは彩度を演出するのにぴったりなフィルムですね。

エクタクロームE100の特徴

作例をいろいろ出しましたが、光のシチュエーションや使用しているレンズやカメラで印象が変わるので、分かりずらいと思います。

正直レンズとフィルムの組み合わせと撮影シーンで結構調整できてしまうのですが、特徴的だと思うのは下記の点です。

クリア

クリアって抽象的な感覚になってしまいますが、グラスなど透明なガラス感のことです。

フジのフィルムは白があまり出ませんが、コダックはハイトーン部分の飛んだような白が魅力的でした。その白がクリアになっていると思います。

階調が豊か

裏を返せばコントラストが低いともいえます。ただクリア感が出る光を入れると、コントラストが控えめながらやや派手な写りをします。

今回目を見張ったのは、シャドー部が潰れないことです。

キレがある

これまでコダックはやや軟調で粘りがある描写でしたが、E100はキレがあります。クリアとも繋がる部分ですが、今までのコダックのフィルムと比べると硬い描写だと思います。

 

総評:今までのコダックともフジとも違う、特徴的なフィルムだと思います。
一番の特徴はクリア感で、コダックのネガフィルムであるポートラのポジ版といった方がイメージに近いかもしれません。
否定的にいうなら、デジタルっぽい。正直「これならデジタルでいいじゃん」と思ってしまいました。

個人的な感想

まず僕が一番好きなポジフィルムは「エクタクロームE100G」で、インドを撮る専用フィルムとして使っていました。

レンズは1981年に発売され、未だに販売が続けられている「Ai-s Micro Nikkor 55mm」。サブ機としてコンタックスのTVSやT2を使っていました。

これらのカメラやレンズと「エクタクロームE100G」の組み合わせが、僕の中のインドの色や写りを表現してくれるものでした。

今回E100を使ってみて、思ったのが「全然違う」ということです。E100はE100Gをベースに作られている聞いていたのですが、差は大きいですね。

ちなみに新しいレンズを使うと、もっともっとクリアに写ると思います。女性のポートレート、コンセプチャルな写真を撮るなら使い方はありそうですが、正直デジタルで撮った写真をフィルムっぽく加工すれば、このフィルムの描写に近いものは作れるのではないでしょうか。

どうやったらこのクリア感を消しながら、フィルムの良いところを引き出すか。うーん、なぜコダックはデジタル寄りのフィルムを作ってしまったのだろうか。