中古市場価格の高騰も止まらず、定価の2倍もするContax T3(コンタックスT3)。海外での人気も高く、価格上昇は止まりそうにもありません。
今となっては完全プレミアなカメラで手が出せないですが、かつてContax T3を使っていた時がありました。不運にも旅中の盗難で無くしてしまいましたが、作例を交えながらT3の素晴らしさを振り返ってみたいと思います。
Contax T3 仕様
発売年月 | 2001年 |
型式 | 35mmストロボ内蔵全自動レンズシャッター式 |
画面サイズ | 24×36mm |
レンズ | カールツァイス ゾナーT*35mm F2.8(4群6枚) |
絞り | F2.8~16(絞りダイヤルによる) |
撮影範囲 | 0.35m~∞ |
フォーカス | オートフォーカス(モードボタンによりマニュアルフォーカス設定可) |
ファインダー | 採光式フレームファインダー |
シャッター | ダブルビトウィーン式レンズシャッター P時:16秒~1/1200秒 (絞り開放時最速1/500秒) LT設定時最長180秒 |
露出制御 | プログラムAE、絞り優先AE ±2EV(1/3ステップ)(CFにより1/2ステップ切替可) |
測光方式 | 2 分割外部測光方式(SPD素子使用) 逆光自動ストロボ発光あり |
測距方式 | 部パッシブ方式、AF補助光、フォーカスロック機構付 |
ファインダー型式 | 逆ガリレオ式ファインダー、倍率および視野率0.5倍 85%(3m) |
セルフタイマー | 電子式、作動時間10秒と2秒、途中解除可 |
電源 | 3Vリチウム電池(CR 2)1本 |
特徴 | 一眼レフの28ミリ交換レンズより軽く、小さくしかも同等以上の描写性能・マニュアルにより絞り優先露出も可能 |
サイズ | 105(幅)×63(高さ)×30.5mm(奥行き) |
質量 | 230g(電池別)、T3D:235g(電池別) |
価格 | 98,000円 |
Contax T3の特徴
2000年を過ぎて発売された高級コンパクトカメラなので、90年代に発売されたカメラとは明らかに現代的な写りで、機能も他を凌駕します。
T3と現代的な描写と機能で対抗できるのは、2006年に発売されたFUJI FILMのKLASSE(クラッセ)SとWぐらいです。
新しいSONNER(ゾナー)レンズの描写
とにかく解像度が高く、日差しが強い日などでも破綻することがありません。コントラストが強く、引き締まった「黒」が出るのが特徴だと思います。
始めてT3を使った際に一番驚かされたのは、室内撮影での解像度と鮮明さです。蛍光灯の元で撮影したのですが、クリアで解像度も申し分ありませんでした。
室内撮影はアンダーになりがちで、GR1などでも結構ノイズが出ますが、T3では一切それが見られません。夕暮れ時にアンダーで撮影した写真もノイズがほぼありませんでしたので、やはり影の描写に強く、アンダーになりがちな環境での使用に耐えられるレンズだと言えます。
シャッタースピード
GR1で1/500秒、コニカのヘキサーで1/250秒だったシャッタースピードに比べ、Contax T3は1/1200秒。その差は圧倒的です。
晴れの日でも絞りを開放付近で撮影でき、撮影の幅が大きく広がりました。
最短距離35cm
T3の最短距離は35cm。レンズが28mmのGR1で35cm、ミノルタのTC-1で45cmですので、それまでの高級コンパクトカメラの中で最も寄れるカメラでした。
特に先代にあたるT2の最短距離が70cmで、人のアップやモノをアップで撮ることができなかったので、大きな進化です。
Contaxの描写が好きだけど、T2は寄れないので購入を控える人は多かったと思います。またT2で不満だった、絞り付近の解像度の低下も見られませんので、非の打ちどころがありません。
Contax T3ではなくRicoh GR1を選んだ訳
機能や描写など云うことなしのT3ですが、僕のメインとしているコンパクトカメラはRicohのGR1sです。Contax T3も一度は手にしたのですが、旅行中に盗まれてしまい思いがけず手放すことになりました。
ただGR1sは3度も買いなおしているにも関わらす、T3を再度購入することはしませんでした。そこら辺の理由をお話ししたいと思います。
晴れの日の描写があまりで好みではなかった。
普段から写真を撮り歩いていますが、僕が力を入れていたのは「アジアのストリート写真」でした。基本的に暑い国しか行っていなかったので、晴れのシチュエーションが多くなります。
T3というか、Contaxのレンズは良くも悪くもドラマチックな描写の傾向です。またT3は晴れの日のコントラストが強いので、自分が撮りたい写真イメージに合いませんでした。
GR1と比べると速写に向いていなかった。
僕はGR1をポケットに入れて持ち歩きます。表面の面積でいうとT3はGR1より小さいカメラですが、重量はGR1より少し重く、奥行きがあります。
そのためポケットから出しずらく、チタン製でグリップがないので滑ります。僕は仕方なく速射ケースを購入し、斜め掛けして持ち歩いていましたが盗み撮りも難しいし、ポケットから出すのと比べると、2テンポぐらいシャッターを切るのが遅れてしまいます。
他に代用できるカメラがあった
正直T3の購入は何度も悩みましたが、最終的に止めてきた理由として、Contax TVSを持っていたことがあります。
TVSはT2から派生したSONNERズームレンズ付きのカメラ。作りが新しくないので、T3と比べるとかなり劣るところはありますが、中々よく写ります。
コンパクトカメラはサブ扱いだったので、それならTVSでとなった訳です。
価格が高い
今と比べると2010年以前は半額以下で購入できましたが、他のカメラも価格が安かったので、やはりT3は高いなーと思い諦めてきました。
ちなみに2007年にT3を63,000円で購入。GR1は23,000円でした。
Contax T3作例
GR1を選んだ僕ですが、ハッとさせられる写真はT3の方が多いです。苦手なシチュエーションも含め、作例をいくつか載せておきます。フィルムは全てPORTA400を使用しています。
影の描写が素晴らしい。彩度はやや飛び気味ですが、シャドーの解像度がえげつないです。
こういう柔らかい光が得意で、立体感が出ます。逆光ですが、シャドーの潰れもあまりありません。
これはたぶん開放で撮影。全体の絵作りはソフトになりますが、ピントはしっかりしています。こういう窓越しの柔らか光の描写が本当に得意です。
苦手なピーカン天気とシャドー。解像度は素晴らしいですが、コントラストの強さが個人的には気になります。
これは更に強い光だった島での1枚。コントラストが強すぎたので、明部を下げて、暗部を少し上げていますが、こういうシチュエーションには向いていないです。ただ解像度が凄いですね。
久し振りに写真を整理してみましたが、やっぱりいいカメラですね。絞り開放の写りはT2やTVSでは出せない立体感と描写です。
やっぱりもう一度買おうかなと思い直しました。
最後に
まとめておきます。
- 解像度が素晴らしい(絞りF4から通常描写)
- シャドーが潰れない
- 柔らかい光(窓越し、レースカーテン越しとか)での立体感や描写が素晴らしい
- 開放の描写がすごい
ネックとなるのは、強い光やコントラストないシーンに弱い点と、価格ですね。
ただ未だに修理を受け付けているお店もあるカメラなので、やっぱりT3は買いですね。初期費用をどう捻出するか考えていきたいと思います。