高級コンパクトフィルムカメラ最盛の90年代に登場し、「最強のスナップシュート機」として、デジタルカメラに移行後も高い支持を得ているGR1シリーズ。
僕もフィルムのGR1sを10年以上に渡って使い、その描写や速射性など、スナップ写真を撮る時の最強機として愛用しているカメラです。
GR1は4群7枚構成で、画面の周辺まで画質の落ちないGRレンズを搭載。外装部品にはマグネシウムダイカストを使用することで、軽さと堅牢さを両立している。
その描写と速写性から森山大道氏がメインカメラとして使用し、蜷川美香さんもサブカメラとして使用するなど、写真作家にも愛用されているカメラです。
GR1sはGR1の改良版にあたり、1996年に発売されたGR1に、専用レンズフード、暗所でのファインダー内に照明点灯など、よりブラッシュアップされて1998年に発売されたモデルです。
仕様
発売年月 | 1998年 4月 |
フィルムシステム | 35mmパトローネ入りフィルム(135) |
画面サイズ | 24×36mm |
レンズ | GRレンズ 28mm F2.8 4群7枚構成 |
フォーカス | パッシブオートフォーカス 被写体自動選択マルチフォーカス |
ファインダー | 採光式フレームファインダー |
シャッター | 電子シャッター タイムモード ・ 2 – 1/500 セルフタイマーつき |
露出制御 | プログラム露出または絞優先AE ISO25 – 3200対応 |
電源 | リチウム電池 CR-2 1個使用 |
特徴 | 一眼レフの28ミリ交換レンズより軽く、小さくしかも同等以上の描写性能・マニュアルにより絞り優先露出も可能 |
サイズ | 幅 117mm 高さ 61mm 奥行き 26.5mm (グリップ部34mm) |
質量 | デートなし:178g デートつき:180g (電池別) |
価格 | デートなし:95,000円 デートつき:105,000円 何れもフード・本革ケースつき |
GR1sの特徴
僕が数多くあるコンパクトカメラの中からGR1sを選んだ理由は大きく3つあります。
GRレンズの描写
一眼レフを凌駕すると云われているGRレンズ。解像度が高く、描写の線が細く、キレがあるのが特徴です。
同時代のコンパクトカメラとして、TC-1、CONTAX T2などがありますが、こちらは線が太く、TC-1はふっくらこってり、T2は彩度が高くドラマチックな描写です。
どのカメラもそれぞれ良さがあるのですが、TC-1、CONTAX T2が晴れた日の写真がオーバーな表現になりすぎるのに比べて、GRは晴れた日にこそナチュラルな描写になります。逆にTC-1、CONTAX T2は影があったり、やや暗い場所が得意なカメラだと思います。
僕は晴れた日の描写を優先したいのと、あまり演出感のない自然なGRレンズが一番好みでした。
また2000年以降に発売された高級コンパクトフィルムカメラである、CONTAX T3やFUJI KRASSE S/Wに比べるとGRレンズは解像度などで若干劣ります。ただ晴れた日の自然な描写は、GRレンズにしか出せないものだと思います。
使いやすいサイズ
僕のGR1sの用途はスナップショットです。いつシャッターチャンスが来るか分からないので、外出する際には、財布、スマホ、GR1sをセットでそれぞれのポケットに入れて歩きます。
そこで重要になってくるのが薄さです。GR1sの厚みは26.5mm (グリップ部34mm)。これならタイトなパンツを穿いていない限りは、後ろポケットからスムーズに取り出すことができます。
他のカメラもポケットに入るサイズ感ではありますが、取り出しにくい厚みだったり、チタン製はスベリ易く、ボックス型のカメラは握りづらいので、落としやすいです。
この速射性に優れていて、気軽に持ち出せる点がGR1sの大きな特徴です。
バレずらい
スナップショットを撮る上で、カメラを向けていることがバレないことはとても重要です。
例えば速射ケースに入れていれば、まずカメラを持っている人として認識されます。そしていざシャッターを切ろうとすると、ケースやストラップなど、動いている対象物が多くなるので、相手に見つかりやすい。
何をしているのか分からないぐらいが理想です。その点、GR1sはカメラ自体の存在感も強くなく、ポケットから出してから撮影までがスムーズです。
細かなおすすめポイント
価格
物としては、チタン製のカメラなどに比べると所有欲は満たされませんが、他の高級コンパクトカメラと比べると安いです。
といっても、45,000円~70,000円ぐらいしますので、安い買い物ではありませんが。
スナップモードがある
焦点距離を2m、絞りをF8に固定してくれる、スナップモードがあります。
他のカメラもマニュアルで焦点距離を固定できますが、ダイアル式で勝手に動いてしまうので、スナップとしては使いづらいです。
このマニュアル式のダイアルは、オートフォーカスでピントが合わせずらい時に使うことを想定したものなので、ちょっと用途が違います。少なくともスナップには向いてないものです。
GR1s作例
タイで撮ったスナップ写真。フィルムはPORTRA400を使っています。
GRレンズの自然でキレのある描写と、PORTAの透明感がある彩度が印象的です。
僕が使うフィルムや設定
僕はKodakのPORTA(ポートラ)が好きなので、フィルムの種類は一択です。後はシチュエーションに応じてISOで使い分けます。
基本はISO160(PORTRA160)を使用。これは僕が晴の日をメインに撮影することと、GRレンズの描写の特性を活かすためにこの感度のフィルムを使用しています。
(作例は使用状況が読めなかったので、ISO400を使用しています。)
まず、GR1sは絞り値がマニュアルで設定できますが、僕はPモード(オート)で撮影します。理由は絞りを変えていては、スナップに間に合わないから。いかに早く、スムーズに撮影するかが一番重要だからです。
またGRのPモードは、レンズの一番写りが良いとされているF4に極力持って行こうとします。ISO400のフィルムを晴の日に使うと、GRの最高シャッタースピードは1/500秒なので、絞りを絞った値で撮影しようとします。
つまり一番好きな描写ではない絞りで、撮影されることが多くなります。そのため、晴れの日はISO160を使うことにしています。
ちなみにGRレンズはF8以降、解像度が落ちるので、少し眠たい描写になります。
秋冬はISO400を使用。晴れている時間が短いので、ISO160だと撮れないシチュエーションが増えるからです。
PORTAにはISO800もありますが、価格が高いのであまり使いません。お祭りなど夜の撮影シーンか、スナップモードを光量が多い夏以外に使う時ぐらいです。
GR1モデルの選び方
GR1には4種類のモデルがあります。
28mmのレンズを搭載したGRは3種類。これはGR1のバージョンごとに名前が違い「GR1→GR1s→GR1v」となります。僕が使っているのはGR1sで、これには理由があります。
初代GR1は、発売当初フィルムの転送に問題がありました。フィルムがコマずれして、写真が重なってしまう問題です。
その後問題は解決されたのですが、中古で購入する場合、それが改良された機体か分かりません。またGR1とGR1sの価格差があまりないので、製造が新しいGR1sを選ぶようにしています。
ではGR1vはどうなのか。価格差が小さいなら製造が新しく、機能も若干追加されたGR1vを選びます。GR1vの価格相場は普通のコンディションで70,000円ほど。GR1sより2万円ほど高くなりますので、これを受け入れるかどうかです。
故障した場合のメンテナンスができるならGR1vを選びますが、壊れたら基本直してくれるお店がありません。また購入時に保証もないので、壊れたら終わりです。
それならGR1sの比較的コンディションが良いものを選んだ方がリスクが小さいと思うので、GR1sをベースに程度の良い中古を探しています。
最後に、GR1の残り1種類はGR21になります。こちらは21mmのレンズが付いているので、超広角が好きな方はこちら1択となります。
GR1コンディションの選び方
外観がきれいなものを選ぶのは大前提として、いくつかポイントと壊れても仕方がない部分があります。
正直なところパーツに消耗品があるGR1を、完動品のまま使うことは、ほぼ不可能です。
液晶表示
GR1で1番故障が多いのが、液晶パネルです。フィルムが後何枚残っているのか、設定などを見る場所です。
これがないともちろん不便なので、表示があるに越したことはないのですが、しばらく使っているとこの表示は壊れると思います。これはGR1の持病のようなもので、寿命により液晶が切れてしまうので、必ず出てくる症状です。
そのため、最初から液晶はないものとして割り切るのもありだと思います。液晶が写らないものは若干価格が落ちますし、設定についてはカメラの挙動とファインダー内の情報で判断することができます。
僕が買ったGR1sが2台とGR10(同じ液晶)は、使っている内に液晶は映らなくなりました。
ファインダー内表示
ファインダーを覗いた時に見える、フォーカス範囲、シャッタースピード、カメラの設定モードなどです。この表示もかなり脆弱で、フォーカス範囲とシャッタースピードの一部の表示が見えなくなります。
フォーカス範囲は撮影対象物との焦点距離によって多少変わってくるだけなので、まあこれは壊れても良しとしています。シャッタースピードも1/30秒の手振れアラートだけ表示してくれれば、実用範囲だと思います。
モード設定。これもカメラの動作でどのモードか分かるので、壊れてもなんとかなります。
シャッター機構・フィルム転送の故障
これが結構やっかいです。最近ではカメラをオークションサイトなどで買うことが多いと思いますが、転売の素人にはこの故障が確認できません。
フィルムを入れて1本全て実写してくれていれば問題ありませんが、転売ヤ―の方はあまりこれをやってくれません。
実際僕はGR1sを使って2台壊れているのですが、液晶はもちろん、1台はシャッター機構、1台はフィルム転送が壊れて使えなくなっています。
シャッター機構の故障は、動作上シャッターは切れるけど、写真が写らないというものです。
フィルム転送の故障は、フィルムを入れて5枚ぐらいまでは撮影できるけど、それ以降フィルムが転送しなくなり、シャッターが切れない状態になります。
2台ともフィルムを入れていない状態で、シャッターが切れるので、実写していないとこれに気付かないことになります。
モルトの劣化
モルト(写真のスポンジのようなもの)が劣化して剥がれてしまったり、溶解して粘着質を持ってしまいます。
モルトが剥がれてしまうと、光が入って感光しますので、ここを塞ぐ必要があります。これはamazonなどで販売されている数百円のモルトを張れば治りますので、モルトの劣化は気にしなくて良いです。
本来外からなんのフィルムを入れているか確認できるよう、窓に沿ってモルトを張る必要があるのですが、僕は面倒なので全部モルトを張り付けています。フィルムによって撮り方が変わる訳ではないので、僕には必要ありません。
最後に
GR1s絶賛の記事を書こうと思っていたのですが、書いている内に中々やっかいなカメラの説明になってしまいました。
僕はこのカメラを使って10年以上になるので、いろんな状況に慣れてしまっていますが、初めて買う方にはかなり曰く付きのカメラになってしまうことになりました。
GR1は生産終了から20年近く経ち、修理などのサポートが終了してから長い年月が経っています。
フィルムカメラは機械式の古いカメラでない限りほとんど修理できませんから、オートフォーカスの電子式カメラを使う以上、故障は宿命のようなものです。
それでも僕はこのカメラをできる限り使い続けるでしょう。
代わりがないなんて言いません。ただ10年以上連れ添って惚れた弱みです(でもあと1台で終わりにしたいかな)。
こんな状況でも、海外ではバンバン売れていますから、修理してくれるお店ができることを祈りつつ、このカメラを愛用していきたいと思います。